2017-06

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2005.08.09 Tue
60年を待たずに

60年前のきょう、
祖母は凄絶な光を目撃する。

捌けた女だった。
背が高く痩身で背筋のスッと伸びた女だった。

その光を見たのは今のわたしの年齢と同じくらい。
眼という器官を叩き潰すような光が山の向こうから一瞬で拡散する。
そして聴覚というものを忘れさせるほどの轟音があとに続く。
その瞬間ただ全てが終わるのだと思ったらしい。
この世の最も美しい光景のように少し早口で話す祖母の姿を思い出す。

町へ降りたとも言っていた。
皮膚を垂らしたヒトガタが歩き、
足下のたくさんの黒い瓦礫に紛れ、
黒く焦げたヒトガタが転がっている。

しかし町に降りた体験の中で最も忘れがたいのは匂いだったという。
その匂いだけは具体的には口にしなかった。できなかった。

例えようのない匂い、言葉にしえない匂い。

そのときの祖母の顔を思い出そうとするのだけれど、思い出せない。
忘れがたい匂いを言語化しようとする祖母の姿を、思い出せない。
想像もできない。

祖母は腫瘍で片目を失いながらも、
去年までは生きていた。去年まで。

わたしが同じところにゆくときまで、
今日が来れば思い出すのだろう。
息絶えた日よりもこの日に思い出すだろう。

そして彼女の姿を通じて、
あのときといまがつながるのだろう。

60年前のきょう、
アンネはすでに15才で亡くなっているが、
わたしの祖母はあの光と音を知覚する。
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【アンナの日記】

ホロコーストの時代に生きたアンネ・フランクにこの日記は関係ないけれどいつか訪れたいアウシュビッツの風景を記録として記憶として鮮明に残せるよう日常を少しづつ撮影してみたり文章を書いてみたり

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